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東京の賃貸家賃が高騰中!単身向けワンルームに異変

都心回帰と物価高が後押しする賃貸家賃の急上昇

2025年春、東京23区を中心に賃貸住宅市場が大きな転換を迎えています。住宅新報の最新家賃調査によると、**ワンルームマンションの平均家賃は10万3938円(前年比+29%)**と異例の高騰を記録。また、分譲マンション価格が手の届きにくい水準に達したことで、持ち家検討層が賃貸へと流れ、都心回帰と企業の出社要請、物価高、賃上げなどが重なり、賃貸市場全体に家賃上昇の波が押し寄せています。

本記事では、東京圏の賃貸住宅市場を以下の5つの観点で深掘りし、オーナー・投資家・管理会社・税理士などが押さえるべきポイントを解説します。

1.東京圏でワンルーム家賃が急騰

1-1:平均家賃は前年比約3割上昇

住宅新報の調査によると、東京23区におけるワンルームマンション(1R/1K)の平均家賃は10万3938円で、前回調査(2024年9月)から約29%の大幅上昇を記録しました。さらに、**上限家賃の平均値は11万1250円(+20.51%)**に達し、築浅・駅近の物件では成約時の家賃が強気設定でも成立する傾向が顕著になっています。

一方、下限家賃は平均6万9571円(+1.45%)にとどまっており、築古・駅から遠い物件では家賃上昇がほとんど見られません。この「好立地築浅vs築古・郊外」という価格差の拡大が、ワンルーム市場の“格差”を物語っています。

1-2:都心回帰+出社要請が拍車をかける

ワンルームほどの伸び率ではないものの、1LDK~2DKの平均家賃は10万6702円(前回比+3.84%)に達しています。さらに、下限家賃平均が8万7669円(+2.61%)、上限家賃平均が12万5737円(+4.73%)と、コンパクトファミリーやDINKs(二人世帯)向けの需要も依然として強い状態が続いています。

しかし、ワンルーム同様、1R~2DKクラスには過去の投資ブームによる大量供給分が市場に残っており、「築古で設備が古い」「駅から遠い」などの条件悪化で空室化が深刻化している物件も散見されます。オーナーは、競合物件との差別化を図るためにリノベーションや家具家電付き賃貸など付加価値を高める工夫が求められています。

2.価格差拡大──人気物件とコンパクト層の二極化

2-1:好立地・築浅ワンルームに集中するニーズ

ワンルームのなかでも「築5年以内」「駅徒歩5分以内」「モニター付きオートロック/宅配ボックス完備」「ネット無料」などの条件を満たす好立地築浅物件では、家賃10万~11万円台でも成約が成立しやすい状況です。入居者は、仕事帰りに買い物や飲食ができる利便性を重視し、家賃の高さよりも「快適さ・安心感」を優先しているため、高めの賃料帯でも空室がほとんど見られません

一方で、条件が少しでも劣る物件(駅徒歩10分以上、築20年以上、部屋設備なしなど)は、下限家賃6万~7万円台でも空室が残るケースが増えています。こうした「選ばれる物件」と「選ばれない物件」の二極化が、オーナーにとっての空室リスクを顕在化させています。

2-2:1LDK~2DKも堅調な家賃推移&供給過多の根強い課題

ワンルームほどの伸び率ではないものの、1LDK~2DKの平均家賃は10万6702円(前回比+3.84%)に達しています。さらに、下限家賃平均が8万7669円(+2.61%)、上限家賃平均が12万5737円(+4.73%)と、コンパクトファミリーやDINKs(二人世帯)向けの需要も依然として強い状態が続いています。

しかし、ワンルーム同様、1R~2DKクラスには過去の投資ブームによる大量供給分が市場に残っており、「築古で設備が古い」「駅から遠い」などの条件悪化で空室化が深刻化している物件も散見されます。オーナーは、競合物件との差別化を図るためにリノベーションや家具家電付き賃貸など付加価値を高める工夫が求められています。

3.ファミリー向けは供給不足が深刻

3-1:2LDK~3DKの空室が極端に少ない

ファミリー層向けの2LDK~3DKでは、平均家賃15万4098円(前回比+1.82%)、**上限家賃平均18万2949円(+2.85%)**と、高額帯でも成約が進んでいます。これは、特に結婚・子育て世帯が「分譲購入を一旦見送り、賃貸で様子を見る」という動きが強まっているためです。都心・城南エリアでは、スーパーや保育園が近くにあるかどうかが選択のポイントとなり、「都心で家賃15万円台なら仕方ない」という心理も根底にあります。

その反面、家具付きやペット可、在宅ワーク対応レイアウトなどを備えた賃貸物件が求められ、ターゲットが明確になるほど「物件紹介できる空きがない」という声が管理会社からも上がっています。

3-2:新築供給が追いつかない背景

ファミリー向けの賃貸市場では、土地取得費用や建築コストの高騰、およびファミリー物件の賃料と収益性のバランスが取りづらいという理由から、新築供給が思うように伸びていません。特に、駅近・学区内エリアでは「ファミリー向け新築がなかなか出てこない」ため、入居希望者が競合状態となり、既存物件の家賃を押し上げる一因となっています。

今後は、ファミリー向け賃貸を供給するにあたり、「長期視点での投資回収」を前提とした「シェアハウス型」や「コンセプト賃貸(共用部充実)」など、従来とは異なる事業モデルの検討も必要になってくるでしょう。

4.沿線別の家賃動向と現場の声

4-1:中央線・丸ノ内線は強気相場が継続

JR中央線(荻窪~中野坂上)や東京メトロ丸ノ内線沿線(新高円寺など)では、家賃8万円以上のワンルーム・1LDKが“即成約”という状況が続いています。仲介会社からは「更新時にオーナーが値上げ要請をしても、入居者が『仕方がない』と応じる」「高設備物件なら家賃10万円超でも空室がすぐ埋まる」という声が聞かれます。

一方で、4万~6万円台の築古物件は決まりにくいとのことで、沿線による「物件の棲み分け」がますます顕著になっています。「高くても築浅に住みたい層」と「多少家賃を抑えて築古でもいい層」がはっきり分かれ、空室リスクを軽減するためには設備更新・リフォームなどの投資が不可欠です。

4-2:小田急・京王線沿線も築浅は即成約

小田急線(新百合ヶ丘・登戸など)や京王線(笹塚・明大前など)でも同様に、築浅・駅近の物件は募集開始から数日以内に成約するケースが増えています。

・新百合ヶ丘:ファミリー向けは少ないが、コンパクトな1LDK・2DKは問い合わせ多数。

・笹塚:単身者や二人暮らしカップルが中心で、賃料よりも「室内設備のグレード」「駅徒歩5分以内」が優先される。

また、小田急沿線(本厚木・海老名周辺)では、駅から少し離れていても築浅なら10万円台の家賃帯で成約するため、駅近物件の空室リスクが相対的に低くなっているという声もあります。いずれにしても、「駅から何分」「築年数」「設備」の3点セットが勝負を分ける状況です。

5.今後の家賃相場と市場の見通し

5-1:ボーナス期間は一服、上昇余地は限定的

東京カンテイの市場調査部・高橋雅之上席主任研究員によると、2025年3月まで東京23区の分譲マンション賃料は築浅事例を中心に4カ月連続で上昇中ですが、転入超過の一巡や**深刻な物価高(米国高関税政策など)**により、今後はこれまでほどの大幅な上昇幅は期待しにくいと見ています。

とくに、米国トランプ政権の高関税政策による企業業績悪化が賃上げの抑制要因となる可能性があり、賃貸需要そのものが予想よりも伸び悩むリスクがあります。消費者(入居者)の実質可処分所得が目減りすれば、家賃10万円超を敬遠する層も出てくるため、家賃水準の“上げ時”は限定的となるでしょう。

5-2:オーナーに求められる“選ばれる戦略”

これからの賃貸経営では、以下のような施策で「入居希望者から選ばれる」物件づくりが必要です。

1.付加価値づくり:家具家電付き、IoT設備(スマートロック・スマートコンシェルジュ)

2.ターゲット明確化:ペット可、シェアハウス型、SOHO向け、DINKs専用レイアウト

3.長期入居優遇策:フリーレントで短期退去リスクを抑制、更新料値引きやポイント制導入など

4.共用部・外観のブラッシュアップ:宅配ロッカー増設、共用ラウンジ整備、Wi-Fi完備スペース

4.情報発信・ブランディング:SNS・YouTubeで内覧動画を配信し、早期に問い合わせを集める

これらの取り組みによって、「家賃だけで勝負しない戦略」を立てることが、空室リスクを軽減しつつ長期的な収益を確保するポイントとなります。

まとめ|価格だけで勝負する時代は終わった

東京23区の賃貸市場は、ワンルーム・1LDK〜2DK・ファミリー向けの各層でそれぞれ異なる動きを見せ、「供給過多」「供給不足」という相反する現象が同時に進行しています。

ワンルーム&コンパクト層:好立地築浅物件は前年比3割超の急騰。供給過多だが「条件さえ良ければ10万円超でも即決」

1LDK〜2DK:平均家賃10万6702円(+3.84%)、下限8万7669円(+2.61%)、上限12万5737円(+4.73%)と堅調。既存物件は物を言わないと空室リスク大

ファミリー向け(2LDK〜3DK):平均家賃15万4098円(+1.82%)で空室が極端に少ない。新築供給不足が顕著

さらに、沿線によって「家賃8万円台でも即決」「4〜6万円台は苦戦」といった温度差が顕在化し、千代田区・中央区などの都心部、及び沿線ブランド(中央線・丸ノ内線・小田急・京王など)が引き続き高い人気を保っています。

今後は、企業の家賃補助や賃上げの行方、米国の高関税政策など外部要因にも左右されるため、家賃相場がさらなる上昇を続けるかは不透明です。オーナーに求められるのは、価格だけでなく**「入居者に選ばれる物件づくり」**。リノベーションや付加価値向上、長期入居特典、情報発信の強化など、柔軟かつデータを駆使した戦略的な賃貸経営が今まさに求められています。