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相続税申告で「土地評価は税理士だけで完結する」と考えることのリスク整理

相続税申告で「土地評価は税理士だけで完結する」と考えることのリスク整理

相続税申告における土地評価は、申告書全体の中でも結果を大きく左右する重要な要素です。
実務の現場では「税理士が土地評価まで対応するのは一般的」「鑑定士を入れるのは特別なケース」という認識が少なからず存在します。

しかし近年、申告後の税務調査や更正処分、裁決・判決事例を踏まえると、**土地評価を“誰の判断で完結させたのか”**首を傾げたくなる場面が増えています。
本記事では、評価手法の是非ではなく、責任の所在と否認リスクという視点から、「税理士だけで土地評価を完結させることの実務上のリスク」を整理します。

第1章 相続税申告における土地評価の位置づけ

1-1 土地評価は「計算」ではなく「判断」の積み重ね

相続税の土地評価は、財産評価基本通達に基づき一定のルールが定められています。
しかし実務上は、単純な数値当てはめでは済まず、以下のような判断が不可避です。

  • 地目認定は現況か、登記か
  • 評価単位は合理的か
  • 画地条件補正は通達どおり(教科書どおり)適用できるか
  • 通達適用自体が合理的か

これらは「正解が一つに定まらない判断領域」であり、結果責任が問われやすい分野でもあります。

1-2 税理士の業務範囲と、実務上の限界

税理士は相続税申告の専門家であり、通達に基づく評価実務にも精通しているのが前提です。
一方で、土地の個別性(利用制限、市場性、減価要因)を価格形成の視点から整理・説明する役割は、本来、不動産鑑定士の専門領域です。

この役割の違いを曖昧にしたまま業務を進めると、後述するリスクが顕在化します。

第2章 「税理士だけで完結」した場合に生じやすいリスク

2-1 否認されたときに説明責任が集中する構造

土地評価が否認された場合、税務署が問題視するのは「評価額そのもの」ではなく、
その評価に至った判断プロセスの合理性です。

税理士単独判断の場合、次のような状況が生じやすくなります。

  • 判断の根拠資料が限定的
  • 市場性・個別減価の説明が弱い
  • 第三者専門家の関与がない

特に、判断の拠り所が限定されることで、結果として納税者有利または過度に保守的な評価となってしまうケースも見受けられます。結果として、税理士が評価判断の最終責任者と見なされる構造になりやすい点は、実務上見過ごせません。

2-2 「通達どおり評価した」ことが防御にならない場面

実務では「通達に従って評価した」という説明が使われがちですが、
通達はあくまで時価算定のための指針であり、万能ではありません。

特に以下のようにグレーゾーンが多いケースでは、通達評価そのものが争点になりやすくなります。

  • 著しい利用制限がある土地
  • 実勢価格と通達評価額の乖離が大きい土地
  • 逐条解説や土地評価の実務本で紹介されている例が綺麗に当てはまらない土地

この場合、「通達どおり」という説明だけでは、合理性を裏付けるには不十分と評価されることがあります。

第3章 不動産鑑定士を関与させる意味はどこにあるか

不動産鑑定士の関与は、「評価額を下げるため」ではありません。
本質的な役割は、価格形成要因を第三者として整理・言語化することにあります。

鑑定評価が持つ機能は次のとおりです。

  • 土地の個別性を市場視点で説明できる
  • 通達評価が合理的か否かを検証できる
  • 税務署・裁判所でも通用する論理構成を持つ

これにより、判断の責任が分業され、税理士単独リスクが軽減されるという実務的メリットが生まれます。

※但し、通達評価をよく分かっている不動産鑑定士は少ないです。肌感覚ですが、全体の20%もいないと思います。以下のリンクから相続専門性研修プログラム修了した不動産鑑定士が調べられますが、あくまで、目安として下さい。研修を終了した者であっても、実際に実務を数多く経験しているとは限りません。グレーゾーンは経験の数が拠り所となることが多いです。

リンクはこちらです👇
【不動産鑑定士への依頼を検討されている方へ】 | お知らせ | 日本不動産鑑定士協会連合会

第4章 判断を誤りやすいポイント整理(チェックリスト)

以下のいずれかに該当する場合、鑑定士関与を検討する合理性が高いと考えられます。

  • 土地の形状・接道・利用制限に説明が必要
  • 評価額が高額で、税額影響が大きい
  • 将来、共有・分割・売却の可能性がある
  • 相続人間で評価額への認識差がある
  • 税務調査リスクを強く意識している

「評価できるか」ではなく、
**「否認された場合に誰が、どの根拠で説明するのか」**という視点が重要です。

第5章 税理士と鑑定士の合理的な役割分担

5-1 対立ではなく、補完関係として考える

相続税申告における土地評価は、「税理士が行うもの」「鑑定士が行うもの」と単純に線引きできる業務ではありません。
重要なのは、どの専門性を、どの局面で使うかという整理です。

一般論として整理すると、役割分担は次のように考えられます。

項目税理士不動産鑑定士(一般的)
税務判断
財産評価基本通達に基づく評価
市場性・個別減価の分析
価格形成要因の説明
第三者性・客観性

この整理自体は、実務の現場感覚とも大きくはずれていないでしょう。
多くの場合、通達評価は税理士が中心となり、不動産鑑定士は「鑑定評価が必要な局面」で関与するという形が採られています。

5-2 「通達評価も含めて任せられる鑑定士」がいるという選択肢

ただし、これはあくまで一般論です。
実務の現場では、通達評価そのものについて、外部の専門家に判断を求めたいというニーズも確実に存在しています。

当事務所では、次の点を前提として業務を行っています。

  • 財産評価基本通達を実務レベルで読み込んでいる
  • 税理士事務所での実務経験を踏まえ、申告実務の流れを理解している
  • 鑑定評価だけでなく、通達評価そのものの妥当性を検証・整理できる

そのため、当事務所の位置づけは、一般的な整理とはやや異なります。

項目税理士当事務所(不動産鑑定士)
税務判断
財産評価基本通達に基づく評価
市場性・個別減価の分析
価格形成要因の説明
第三者性・客観性

実際に、

  • 税理士事務所から通達評価そのものの外注
  • 申告前に評価の妥当性を第三者として確認してほしい
  • 税務調査対応を見据えた評価ロジックの整理

といった依頼を受けるケースも少なくありません。

ここで重要なのは、
「税理士が評価できないから鑑定士に任せる」のではなく、
**「責任と判断を分業した方が合理的な局面がある」**という点です。

通達評価であっても、

  • 判断が難しい
  • 税額影響が大きい
  • 後日の説明責任が重い

こうした場合には、通達評価を含めて専門家を組み合わせるという選択肢が、実務上きわめて有効になります。

コラム:通達評価を外注するという実務判断

相続税申告では、通達評価は税理士が担うのが一般的です。
ただし近年、通達評価そのものについて第三者の関与を求めるケースが増えています。評価額よりも、「その判断を誰が、どの根拠で行ったのか」が問われる場面が増えているためです。

通達評価であっても、画地認定や補正率の選択、通達適用の可否などは判断事項であり、税額影響が大きい案件ほど税理士単独判断となること自体がリスクになる場合があります。判断の重さに応じて専門家を組み合わせることが、現在の相続税実務における合理的なリスク管理といえるでしょう。

まとめ

相続税申告における土地評価は、「税理士ができるか、鑑定士が必要か」という単純な問題ではありません。
実務上、重要なのはどこまでを、誰の判断として整理するのが合理的かという視点です。

通達評価は、相続税実務の中核であり、多くのケースでは税理士が担います。
一方で、画地認定や補正率の選択、通達適用の可否など、通達評価であっても判断の重さが増す局面は確実に存在します。そうした場面では、評価額そのものよりも、判断プロセスと説明責任が問われます。

当事務所では、不動産鑑定評価に限らず、通達評価そのものの整理・検証にも対応しています。
税務実務を前提に、通達評価が合理的か、第三者として説明可能な形になっているかを確認する役割です。

評価方法を切り替えるかどうかではなく、
判断の重さに応じて専門家をどう組み合わせるか
その選択肢を持っておくことが、相続税申告における現実的なリスク管理といえるでしょう。

判断に迷われる段階で整理しておくことで、選択肢を狭めずに対応することが可能です。
必要に応じて、専門家の関与を検討するという判断も、自然な選択肢の一つと考えられます。

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